Googleマップの店名に「交通事故専門」と入れている。ホームページに「痛くない施術」と書いている。同業から広告規制が厳しいと聞いたが、何がダメなのか分からない。
この記事は、その線を引くためのものです。引用は厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドラインと条文の原文によります。このガイドラインは2025年2月18日に策定されたもので、それ以前に書かれた解説記事は前提が古い可能性があります。
先に結論を2つ。ホームページは原則として広告規制の対象外です。ただし店名と施術時間の表記は、かなり細かく決まっています。
なお、この記事は法的な助言ではありません。個別の判断は都道府県か保健所の窓口に確認してください。
まず、自分がどれに当たるかを確かめる
同じように見えても、適用される法律が違います。ここを間違えると、以下の話が全部ずれます。
国家資格があるかどうかで分かれる
| 施設 | 資格 | 広告を縛る法律 |
|---|---|---|
| 接骨院・整骨院 | 柔道整復師 | 柔道整復師法 第24条 |
| 鍼灸院・あん摩マッサージ指圧 | はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師 | あはき師法 第7条 |
| 整体院・カイロプラクティック | 民間資格または無資格 | 上の2つは適用されない |
| クリニック・歯科医院 | 医師・歯科医師 | 医療法(医療広告ガイドライン) |
自分がどこにいるかを確認してから先へ進んでください。
整体院には、広告を縛る法律が無い
整体院やカイロプラクティックには、柔道整復師法もあはき師法も適用されません。広告可能な事項を限定列挙する法律が存在しないということです。
ただし、何を書いてもいいわけではありません。景品表示法、医薬品医療機器等法(薬機法)、医師法は当然かかります。効果をうたえば薬機法に、根拠のない優良表示をすれば景表法に触れます。
そして今回のガイドラインは、「無資格者の行為に関する広告について」という項を新しく設けました。原文にはこうあります。
無資格者の行為に係る広告については、適応症の広告や、身体症状・疾病に効果があると受け取られるような広告等消費者に誤認や過度な期待を与えるおそれがある広告や、あん摩マッサージ指圧以外の行為を提供する場所において「マッサージ」という語句を用いた広告等がみられ、消費者に誤認を与えるおそれがあると指摘されている
整体院が「マッサージ」という言葉を使うことが、名指しで問題視されています。規制の外にいるつもりでいると足をすくわれます。
ホームページは、原則として広告規制の対象外
ここが、リハサク、joypal、全国統合医療協会のいずれも書いていない前提です。
広告の3つの要件
ガイドラインは、次の3つを全部満たすものを広告と判断するとしています。
① 利用者を施術所等に誘引する意図があること【誘引性】② 施術者の氏名又は施術所等の名称が特定可能であること【特定性】③ 一般人が認知できる状態にあること【認知性】
3つ目の認知性が効きます。原文はこう続きます。
インターネット上の施術所等のウェブサイト等は、当該施術所等の情報を得ようとの目的を有する者が、自らURLを入力したり、検索サイトで検索した上で閲覧するものであるため、「認知性」を満たさないものとして、従来情報提供や広報として扱ってきた。これらについては、引き続き原則として広告とは見なさないこととする。
自分から探しに来て見るものは、広告ではない。この理屈でホームページは外れています。
ちなみに、医療機関はこの逃げ道がありません。医療広告の定義には認知性が入っておらず、2017年の法改正でウェブサイトも規制対象になりました。同じ「体を診る仕事」でも扱いが逆になっています。クリニックのGoogleマップと、書いてはいけない言葉に書きました。
ただしガイドラインは、書くべきこと・書くべきでないことを定めている
規制対象外だから自由、とはなりません。ガイドラインは自主的な取り組みを促す形で、内容の在り方を定めています。
掲載すべき事項として挙がっているのは、問い合わせ先、自費の施術内容と通常必要とされる費用、自費施術の主なリスクと副作用。回数券やプリペイドカードを売るなら、その内容と契約内容も表示せよとあります。
掲載すべきでない事項の例はこうです。
・絶対安全な施術です。絶対に治る施術。・加工、修正した施術前・施術後の写真等の掲載・口コミサイトで1位を獲得。・○○にも掲載された・こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受療ください。
「口コミサイトで1位」が名指しで挙がっているのは、覚えておく価値があります。
なお、利用者が自分で書いた体験談や手記は、通常広告とは見なされません。Googleマップの口コミは、患者が自発的に書いたものであればここに入ります。
広告になるもの。ここにGoogleマップが関わる
ホームページが外れるなら何が広告なのか。ガイドラインは例を挙げています。ここが実務でいちばん効きます。
お金を払って上位に出した状態
(例)・検索サイト上で「鍼灸」と検索した際にスポンサーとして表示されるもの・検索サイトの運営会社等に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたもの
リスティング広告を出すと、それは広告です。そして広告である以上、書ける内容は後述の限定列挙に戻ります。「痛みの原因を根本から」といった広告文は使えません。
ここは当社にとって都合の悪い話も含みます。当社はGoogleビジネスプロフィールの整備を売っています。ただし、Googleに広告費を払っているわけではありません。お客様からいただくのは代行の費用で、検索サイトの運営会社への支払いではない。条文の文言上は、上の例には当たりません。
それでも、整骨院・鍼灸院のお客様に対しては、広告可能事項の範囲内で情報を整えることに徹すると決めています。効果や技能に踏み込んだ文言を書かない。リスティング広告の出稿は勧めない。やれることより先に、やらないことを決める必要がある業種です。
「上位表示を保証します」という営業電話への対応は、ホームページとGoogleマップの営業電話にどう答えるかに書きました。
ドメイン名も対象になりうる
見落とされやすいところです。ガイドラインは、直接的な表現でなくても広告に含まれるとしていて、その例にこう書いています。
・www.katakorinaoru.ne.jp等のURLの使用
ドメイン名が「肩こりが治る」と読めるという理由です。看板や文章だけの話ではありません。
これから独自ドメインを取る予定なら、効果を連想させる文字列を避けてください。屋号か地名にしておくのが無難です。ドメインは後から変えると、貼った看板もチラシも全部作り直しになります。当社がドメイン取得から請け負う場合も、ここは最初に確認します。
広告してよい事項は、数えられるほどしかない
広告に当たると判断された場合、書けることは限られます。
法律で決まっている4つ
柔道整復師法 第24条です。
一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項三 施術日又は施術時間四 その他厚生労働大臣が指定する事項
あはき師法 第7条もほぼ同じ構成で、こちらは業務の種類(あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう)が加わります。
厚生労働大臣が指定した7つ
四号の「指定する事項」は告示で決まっています。柔整の場合はこうです。
- ほねつぎ(又は接骨)
- 届出が完了した旨
- 医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼・骨折は医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)
- 予約に基づく施術の実施
- 休日又は夜間における施術の実施
- 出張による施術の実施
- 駐車設備に関する事項
以上です。料金も、症状も、施術の特徴も入っていません。
技能・施術方法・経歴は一切書けない
条文の第2項に、さらに念を押す規定があります。ガイドラインの説明を引きます。
あはき師法第7条第2項、柔整師法第24条第2項の規定により、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する広告は一切認められないこと。
挙がっている例が具体的です。
| 分類 | ガイドラインの例 |
|---|---|
| 技能・施術方法 | 慢性病の根本治療、難病治療の専門、高い技術、○○流指圧、痛くない鍼、○○流接骨術 |
| 経歴 | ○○養成校卒業後、中国○○大学にて学位取得、○○療法の第一人者である○○先生に師事、○○会員、○○研修修了、有名人のトレーナー |
「痛くない鍼」も「◯◯先生に師事」も、広告としては使えません。そして、言い換えても同じです。ガイドラインには「英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可」とあります。
店名と施術時間の書き方
ここがGoogleマップに最も直結します。
使えない名称
ガイドラインは、施術所の名称について可否の例を挙げています。
使えないもの
- 病院や診療所と誤解する恐れがあるもの:治療所、メディカル、クリニック、リハビリ
- 対象者を限定するもの:女性専門療院、交通事故専門、アスリート
- 施術内容・技能・方法を含むもの:不妊鍼灸、背骨専門、無痛治療、電気療法
- 効能を含むもの、優良と思わせるもの:姿勢改善、小顔矯正、背骨矯正、巧み
使えるもの
- 業態を特定せずに「○○施術所(院)」
- 施術業態に治療院を付ける:「○○鍼灸治療院」「○○鍼灸治療所」
- 併設している場合の併記:「○○接骨院・鍼灸院」
Googleビジネスプロフィールの店名欄にキーワードを足すのは、Googleのポリシー上も禁止されています。整骨院・鍼灸院の場合は、法令の側でも縛られる。二重です。
「交通事故専門」を店名に入れている店は実際によく見ます。看板にも入っていることが多い。ここを直すのは面倒ですが、Googleマップの店名だけなら管理画面から変えられます。
なお、「整骨院」という名称そのものの扱いは検討会で議論が続いた論点です。自分の名称が使えるかどうか迷ったら、都道府県か保健所の窓口に聞いてください。指導を行うのは自治体です。
「診療時間」と書いてはいけない
これは知らない人がほとんどです。施術日・施術時間の表記について、こう決まっています。
使えない:診療日、診療時間、診療中、診察日、診察時間、休診日、初診、再診、往診
使う:施術日、施術時間、休療日、初検、再検、往療、施療
医療機関と紛らわしい表記ができないためです。Googleビジネスプロフィールの営業時間の説明や、ホームページの「診療時間」という見出しが、そのまま該当します。
「往診します」は「往療」、「休診日」は「休療日」。置き換えるだけなので、今日直せます。
では、何を書くか
禁止の話が続いたので、残る範囲を書きます。
書けるのは、届出をした施術所であること、資格を持っていること、どこにあるか、いつ開いているか、予約できるか、駐車場があるか。ここに嘘がなく、正確に保たれていること。それが全部です。
地味に見えますが、来る前に確認されるのはこの範囲です。そして正確さでは差がつきます。臨時休業が反映されていない施術所は多い。
そのうえで、ホームページは原則として広告規制の対象外なので、自費の施術内容と費用、リスクは、むしろ書くべき事項としてガイドラインに挙がっています。回数券を売っているなら、その内容と契約条件も。
つまり、Googleマップは絞り、ホームページで説明する。この分担になります。当社が整骨院・鍼灸院のお客様にお出しする構成も、この形です。
料金と作業範囲はMEO対策の費用相場と、月額料金に入っている作業時間に書いています。
まとめ
Googleマップの店名欄を開いてください。屋号と業態以外の言葉が入っていたら、そこが最初に直す場所です。「交通事故専門」「小顔矯正」「無痛」。心当たりがあれば、今日変えられます。
次に、ホームページの「診療時間」を「施術時間」に直してください。この2つは、その場で終わります。
