Googleマップの口コミに返信したいが、医療広告ガイドラインに引っかかると聞いて手が止まっている。
この記事は、どこまで書けるのかを決めるためのものです。引用はすべて厚生労働省の医療広告ガイドラインの原文によります。
先に言っておくと、Googleビジネスプロフィールは医療広告の規制対象です。そして、患者が書いた口コミと、医院がつけた返信は、扱いが違います。
なお、この記事は法的な助言ではありません。個別の判断は保健所や専門家に確認してください。
Googleマップは「広告」に当たる
医療広告の3つの要件
ガイドラインは、次の3つを全部満たすものを医療広告と判断するとしています。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院、診療所……の名称が特定可能であること(特定性)③ 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であること
Googleビジネスプロフィールに医院名を出し、診療内容を書き、来てほしいと思って載せている。3つとも満たします。
「認知性」が入っていないことの意味
気づきにくい点があります。この3要件に「一般人が認知できる状態にあること(認知性)」が入っていません。
整骨院や鍼灸院を縛る法律では、この認知性が要件に入っています。そのため、自分で検索して見に行くウェブサイトは「認知性を満たさない」として原則規制対象外になります。
医療機関にはその逃げ道がありません。2017年の医療法改正で、医療機関のウェブサイトは他の広告媒体と同じ規制対象になりました。ガイドラインには、その経緯がこう書かれています。
医療機関のウェブサイト等についても、他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とすることとした
つまり、ホームページもGoogleビジネスプロフィールも、チラシと同じ土俵です。整骨院とは逆になっています。詳しくは整骨院・鍼灸院がGoogleマップに書ける言葉に書きました。
自院が書くと禁止になるもの
禁止されている5つの類型
ガイドラインが挙げているのはこれです。
(ⅰ)比較優良広告(ⅱ)誇大広告(ⅲ)公序良俗に反する内容の広告(ⅳ)患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告(ⅴ)治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
これに加えて、虚偽の広告は罰則つきで禁じられています。
「患者様の声」は自院が載せると広告になる
上の(ⅳ)です。ここを見落としている医院が多い。
ガイドラインには、判断の理由まで書かれています。
当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で……禁止されること)
自院のサイトに「患者様の声」として治療の効果に触れた体験談を載せると、広告に該当し、そのうえで禁止されます。インタビュー記事の形でも、匿名でも同じです。
ただし、禁止されているのは治療等の内容または効果に関する体験談です。「スタッフの対応が丁寧だった」「院内がきれいだった」といった、治療の効果に触れないものまで一律に禁止されているわけではありません。ここは線が細いので、迷ったら載せない方が安全です。
治療前後の写真
(ⅴ)です。ビフォーアフター写真は、それだけで一律禁止ではありません。禁止されるのは患者を誤認させるおそれがあるものです。
通常必要とされる治療内容、費用、リスク、副作用などの説明を十分に付ければ認められる余地があります。ただ、Googleビジネスプロフィールの写真欄にその説明を添えるのは現実的ではありません。マップの写真には、治療前後の比較を使わない方がいい。
口コミは誰の表示か
ここが、この記事でいちばん整理しておきたいところです。
患者が自分で書いた口コミ
患者が自発的にGoogleマップへ書いた口コミは、医院が書かせたものではありません。医院の広告として扱われるものではない、と考えるのが自然です。
ガイドラインが禁じているのは「自らのウェブサイト等に掲載する」体験談です。患者が自分の意思で第三者のサービスに投稿したものは、これとは別になります。
返信は医院の表示になる
一方で、返信は医院が書いた文章です。Googleマップ上では「オーナーからの返信」と明示されます。
だから、返信の中で治療の効果に触れると、そこは医院の表示になります。
- 「その症状は当院の◯◯治療で改善します」→ 効果に踏み込んでいる
- 「他院で治らなかった方も多く来られています」→ 比較優良に寄る
- 「ご来院ありがとうございました。またお困りのことがあればご相談ください」→ 効果に触れていない
返信では、来院への感謝と、次にどうすればいいかだけを書く。これが実務上いちばん安全です。
そして、返信には患者の個人情報を書かないという別の問題もあります。「先日インプラントの処置をされた◯◯様」と書いた時点で、その人の治療内容を公開したことになります。口コミへの返信一般の書き方はGoogleのクチコミへの返信の書き方と例文に書きました。
口コミを依頼するときの二重のリスク
医院が患者に口コミを頼む場合、縛りが2つかかります。
1つ目はGoogleのポリシーで、これは業種を問いません。見返りを渡す、満足した人だけに頼む、その場で書かせる。どれも禁止です。詳しくはGoogleの口コミを増やす頼み方に書きました。
2つ目が景品表示法です。2024年6月、消費者庁は医療法人に対して、Googleマップへの口コミ投稿を条件にワクチン接種費用を割り引いた行為について、ステルスマーケティング告示違反として措置命令を出しました。医療機関に対する初めての事例です。
正直に書くと、クリニックは口コミを増やしにくい業種です。頼み方の制約が二重にかかるうえ、患者側にも「通院していることを知られたくない」という事情があります。件数で競合を追い越そうとしない方がいい。
ホームページに詳しく書くための条件
「では、自由診療の内容を詳しく書けないのか」という話になります。書けます。広告可能事項の限定解除という仕組みがあります。
4つの要件
ガイドラインの原文です。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
③と④は自由診療の情報を出す場合に限られます。②の問い合わせ先とは、電話番号やメールアドレスのことです。
自由診療の費用は、最低額だけを書いてはいけません。ガイドラインは「通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数」を掲載せよとしています。明確でないなら、最低金額から最高金額までの範囲を示す。しかも、利点と比べて極端に小さい文字で書いたり、リンク先の奥に隠したりしてはいけないと明記されています。
お金で上位表示させると、この条件が外れる
ここが見落とされます。①の説明に、こう書かれています。
インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること
つまり、Google広告などに出稿して表示させたページは「患者が自ら求めて入手する情報」に当たらず、限定解除が効きません。その結果、広告可能事項の限定列挙に戻り、詳しく書いた内容が違反側に回りうる。
広告を出すかどうかは、集患の手段の問題だと思われがちですが、サイトに何を書けるかにまで影響します。ここは先に決めておいた方がいい。
なお、Googleビジネスプロフィールの情報を整えること自体は、検索サイトの運営会社に費用を支払う行為ではありません。当社が受け取るのは代行の費用で、Googleに払う広告費ではない。文言上は上の例に当たりませんが、医療機関の場合は広告そのものの扱いになるので、結局は書ける内容の範囲内で整えることになります。
それでもできること
禁止の話ばかりになったので、残る範囲を書きます。ここは十分に広い。
- 診療科目、診療日、診療時間、休診日。正確に保つ。これが最も効きます
- 場所と行き方。駐車場の有無と台数、最寄り駅からの道順
- 院内と設備の写真。治療前後の比較でなければ問題ありません
- 対応している保険、支払い方法
- 予約の方法と、予約なしで受けられるかどうか
- バリアフリー、キッズスペース、駐車場といった施設の情報
派手さはありませんが、患者が来る前に確認するのはこの範囲です。
当社はGoogleビジネスプロフィールの整備を月額3,000円(税別)で受けていますが、クリニックの場合は提供できる範囲が他の業種より狭くなります。投稿代行のオプション(月4回5,000円)も、書ける内容が限られるぶん本数が出ません。
契約前にその話をします。「クリニックでも同じことができます」と言う業者がいたら、何を書くつもりなのかを先に聞いてください。
まとめ
自院サイトの「患者様の声」のページを開いて、治療の効果に触れている記述がないか確認してください。ここが、いちばん多い引っかかりどころです。
整骨院・接骨院・鍼灸院は、これとは別の法律で規制されています。内容も逆向きなので、整骨院・鍼灸院がGoogleマップに書ける言葉を読んでください。
