手元に見積書があって、その金額が妥当なのか分からない。この記事は、その状態で読まれることを想定して書いています。
先に結論を書くと、相場の一覧表を見ても、自分の見積書は判定できません。 相場は幅が広すぎて、自分がどこに当たるのかが分からないためです。この記事では、見積書を5分で採点する手順、1ページのホームページにかかる実費、契約前に必ず確認する3つの項目を書きます。
相場の数字は、そのままでは判定に使えない
検索すると「10万円〜300万円」のような幅の広い数字が並びます。実際の制作費に幅があるのはそのとおりですが、幅が広い数字は判定に使えません。 自分の見積書が30万円だったとして、その幅のどこに入っているのかが分からないからです。
出典がある数字と、ない数字を分ける
相場記事に載っている数字は、大きく2種類あります。
1つは、調査元と件数が明示されている数字。もう1つは、業界内で互いに引用し合っているだけで、元をたどれない数字です。「フリーランスなら10〜30万円、制作会社なら80〜150万円」といった区切りは、たいてい後者です。複数のサイトに同じ数字が載っているので事実に見えますが、一次の調査にたどり着けません。
この区別を書いている記事を、私はほとんど見たことがありません。
公表されている調査は「店舗の相場」ではない
出典をたどれる数字として、発注マッチングサイト「Web幹事」を運営していた株式会社ユーティルが発表した発注データがあります。発注者846社を対象に、平均発注額82.5万円、中央値43.4万円という結果です(調査期間 2022年1月〜2023年12月、2024年5月30日発表)。
ただし、この数字を自分の店に当てはめてはいけません。母集団が違います。
- 集計されているのは、Web幹事という発注マッチングサイトを経由した発注
- 最も多い業種はコンサルティング・士業(9.2%)
- つまり、そもそも外注する前提で予算を組んだ法人が中心
個人でやっている飲食店や美容室が1ページのホームページを作る話とは、前提が違います。中央値43.4万円という数字を見て「うちの見積書は安いから大丈夫」と判断すると、間違えます。
相場を確認する作業は、ここで終わりにしてください。 続きは、手元の見積書そのものを見る作業です。
見積書を5分で採点する4つの手順
紙かPDFの見積書と、電卓を用意してください。専門知識は要りません。
手順1 総額を出す(初期費用+月額×契約月数)
まず、初期費用と月額を足し算します。
見積書は初期費用が目立つように書かれていることが多いのですが、実際に払う金額を決めるのは月額と契約期間の掛け算です。
| 例 | 初期 | 月額 | 契約 | 総額 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 300,000円 | 3,000円 | 12ヶ月 | 336,000円 |
| B社 | 0円 | 25,000円 | 60ヶ月 | 1,500,000円 |
B社は「初期費用0円」と書いてあります。総額はA社の4倍以上です。
契約月数が見積書に書かれていない場合は、その場で聞いてください。 書いていないことが一番危ない状態です。
手順2 1ページあたりの単価に割る
次に、総額をページ数で割ります。
トップページ、メニュー、アクセス、お問い合わせの4ページで総額336,000円なら、1ページ84,000円です。この数字にすると、会社をまたいで比較できるようになります。
ページ数が「10ページまで」のように上限で書かれているときは、実際に作るページ数で割ってください。使わないページの分まで払っていることがあります。
手順3 原稿と写真を誰が作るのかを確認する
ここが金額を最も左右します。
「原稿は貴社にてご用意ください」と小さく書かれている見積書は珍しくありません。この一行があると、文章を書く作業が丸ごと店側に残ります。営業しながら10ページ分の文章を書くのは、思っているより大変です。
写真も同じです。撮影が含まれるかどうかで金額は大きく変わります。含まれない場合、スマートフォンで撮った写真を使うことになりますが、それ自体は悪いことではありません。問題は、それを想定していないまま契約して、公開が3ヶ月遅れることです。
見積書にこの記載がなければ、次の2つを聞いてください。
- 文章は、誰が、どこまで書くのか
- 写真は、撮影に来るのか、こちらで用意するのか
手順4 月額の中身を1行ずつ言葉にしてもらう
月額の欄が「保守費用」の5文字だけ、という見積書があります。これは後から最も揉めます。
以下を、口頭ではなく書面かメールで答えてもらってください。
- 営業時間や定休日を変えたいとき、追加費用はかかるか
- 写真の差し替えは月に何回までか
- 「更新」に含まれるのはどこまでか(文章の修正は? ページの追加は?)
- ドメインとサーバーの費用は、この月額に含まれているのか
「更新」という言葉の範囲は、会社によってまったく違います。 電話番号の差し替えを更新に含める会社もあれば、1文字でも触ったら別料金の会社もあります。ここを曖昧にしたまま契約すると、1年後に必ず食い違います。
1ページのホームページの原価を公開する
制作を請ける側なので、本来は書かない方が得な話です。ただ、これを知らないまま見積書を見ても判定できないので、当社の実際の数字を出します。
かかる実費は、月300円前後
1ページのホームページを公開し続けるために、毎月必ず出ていくお金は次の2つだけです。
| 項目 | 実費 |
|---|---|
| 独自ドメイン(.com) | 年約2,000円 = 月約170円 |
| 独自ドメイン(.jp) | 年約4,000円 = 月約330円 |
| ホスティング(サーバー) | 当社の構成では0円 |
合計で、月170〜330円。当社がホームページの月額を3,000円(税別)にしているのは、この実費の上に作業の時間を乗せているからで、実費そのものは月300円前後しかかかりません。
サーバー代が0円なのは、Cloudflare Pages という配信サービスの無料枠で足りるためです。1ページの店舗サイトは、この枠を超えません。
残りは、人の時間に払っている
原価が安いことは、制作費が不当だという意味ではありません。払っているのは、ほとんどが人の時間です。
当社の場合、1ページのホームページの制作標準時間は2時間です。ここには、店の情報を聞き取り、文章を整え、スマートフォンで見たときの並びを確認し、ドメインを取得して公開するまでが含まれます。公開したあとも、営業時間の変更や表示の不具合に対応する時間が毎月発生します。
だから、見積書を見るときに問うべきは「原価に対して高いか」ではありません。この金額で、誰が、何時間、何をするのかです。手順4がそこに直結しています。
「無料のサーバー」にも上限がある(当社の失敗)
無料枠のホスティングは便利ですが、枠の数え方を確認しないと痛い目にあいます。
当社は以前、別の配信サービスで複数のサイトを運用していました。無料枠は月300ポイント。更新を1回反映するたびに15ポイント固定で減る仕組みで、サイトごとではなくアカウント全体で1つの枠でした。
つまり、月20回で使い切ります。別のサイトを更新しても、同じ枠から減ります。実際に枠が尽き、営業で使っているサイトを8日間まったく更新できませんでした。
この経験があるので、当社は Cloudflare Pages に移しました。読者の方が確認すべきは、サービス名ではなく次の一点です。
「その無料枠は、サイトごとの枠ですか。アカウント全体の枠ですか」
制作会社が無料枠を使うこと自体は、悪いことではありません。当社もそうしています。ただ、上限に当たったときに更新が止まるのは、店の側です。
契約前に必ず確認する3項目
金額の話が終わったら、契約書を見てください。この3つは、5年後の損害額に直結します。
ドメインの名義は誰か
ホームページのURLになる文字列(例:ochiaishokudo.com)を、誰の名義で取得するかという話です。
制作会社の名義で取得されていると、解約したときに、そのURLを持ち出せません。 名刺、看板、チラシ、Googleマップに載せてきたURLが全部使えなくなります。作り直せば済む話ではありません。
契約前に「ドメインは当店名義で取得してください」と伝えてください。断られる理由は、通常ありません。
解約したらデータは返ってくるか
写真、文章、問い合わせの履歴。これらを解約時に受け取れるかどうかを、契約書で確認します。
当社は返します。 契約が終わったらドメインとデータをお渡しし、他社へ移せる状態にする、と決めています。業界の慣行としては珍しい方だと思いますが、店の資産を人質に取って契約を続けさせるのは筋が違うと考えているためです。
これは自社の方針の話なので、他社がそうしていないと言いたいわけではありません。ただ、契約書に書いていない会社は多いので、書いてもらってください。
Googleのお店情報の権限を渡していないか
ホームページ制作と一緒に、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出るお店の情報)の設定を頼むことがあります。このときに事故が起きます。
Googleビジネスプロフィールの権限は「メインのオーナー」「オーナー」「管理者」の3段階で、ユーザーを追加したり外したりできるのはオーナーだけです。管理者は誰も外せません。 制作会社がオーナー側になっていると、契約が終わったあとに店側が自分の営業時間すら直せなくなります。
メインのオーナーは必ず店側が持ってください。 制作会社には管理者として入ってもらえば、作業は問題なくできます。当社はこの形以外では受けていません。
この件は別の記事で詳しく書いています。→ Googleマップに自分の店が出てこないときに確認すること
ホームページを後回しにしていい場合
制作する側として言いにくいのですが、先にホームページを作らない方がいい店があります。
飲食店、美容室、整体院のように、お客さんが「大津市 ランチ」「草津 美容室」で探す業種は、検索の入口がGoogleマップです。ここが整っていない状態でホームページだけ作っても、そもそも見に来る人がいません。
そしてGoogleビジネスプロフィールの登録と整備は、Googleに払う費用は0円です。 業者に頼まず、自分でできます。写真を10枚以上入れて、営業時間を正確にして、カテゴリを正しく選ぶ。これだけで見え方は変わります。
ホームページが先に効くのは、こういう場合です。
- 説明が必要な商品やサービスを扱っている(工務店、士業、クリニックなど)
- 料金表やメニューを見てから来店するかを決められる業種
- Googleマップからリンク先として飛ばす受け皿がまだない
迷ったら、Googleマップを先にしてください。 ホームページは、そのあとでも遅くありません。
まとめ
まず、手元の見積書を開いて、初期費用と「月額×契約月数」を足してください。電卓で1分で出ます。
その総額を見てから、もう一度その会社と話をすることをお勧めします。
出典
- 株式会社ユーティル「Web幹事」調査データ(発注者846社、調査期間 2022年1月〜2023年12月、 2024年5月30日発表)
※このリリースは発表当時の社名で出されたもので、PR TIMESのページは現在「株式会社できるくん」名義で表示されます。同一の発表です。本文の数値は2026年8月31日に原文で確認しています。
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