開業したときに作った動物病院のホームページを、そろそろ書き直したい。去勢や避妊の手術、歯石の除去、健康診断。やっている診療を、全部載せたいが、獣医療の広告には決まりがあると聞いた。どこまで書いてよいのか。

この記事は、その線を引くためのものです。根拠は農林水産省の「獣医療広告ガイドライン」(令和5年11月13日に全部改正、5消安第4053号)と、2024年4月1日に施行された獣医療法施行規則の改正です。

先に結論を書きます。診療内容は、問合せ先・通常必要な診療内容・主なリスク・費用の4つを添えれば広告できるようになりました。 逆に言えば、4つを添えずに「〇〇やってます」とだけ書くのは、広告としては認められません。

ホームページは、原則として広告ではない。ただし例外がある

ガイドラインは、広告を3つの要件で判断します。

要件意味
誘引性飼い主を呼び込む意図があること
特定性獣医師の名前か病院の名前が分かること
認知性一般の人が目にできる状態にあること

3つ全部に当てはまれば広告です。

動物病院のホームページについて、ガイドラインはこう整理しています。飼い主がURLを入れたり、自分で検索したりして見に来るものなので、通常は誘引性と認知性が無く、原則として広告に当たらない。

ただし、次のものは認知性があると書かれています。

  • ウェブサイトの広告
  • 検索エンジンで検索した結果、上位に表示されるもの
  • チラシなどの二次元コード(QRコード)やバナー広告から飛ぶもの
  • SNSで不特定多数に広がるもの

チラシにQRコードを刷ってホームページへ誘導している病院は多いはずです。その時点で、ホームページは広告に近い扱いになります。

さらに、ガイドラインは広告に当たらないホームページについても、広告に準じて情報を出すよう求めています。技能や療法、経歴をホームページに書くことはできますが、診療内容を載せるなら4つを全部表示するのが望ましい、という書き方です。

当社は、動物病院のホームページは広告と同じ基準で書くことを勧めます。 「原則は広告ではない」に頼って書き分けると、チラシを1枚配った日から線が変わります。最初から広告の基準で書けば、どこから来た人が見ても困りません。

2024年4月から、診療内容は「4つを添えれば」広告できる

見直しの前は、広告できる診療は限られていました。農林水産省の資料に載っている例は、犬猫の避妊去勢手術、予防注射、健康診断、フィラリア症の予防などです。高度な診療やノミ・ダニの駆除、マイクロチップの装着は広告できず、獣医師の専門性や経歴も書けませんでした。

2024年4月1日からは、次のものが加わりました(愛知県の案内による)。

  • 農林水産大臣が指定した団体による、獣医師の専門性の認定
  • 高度な検査、手術その他の治療
  • 寄生虫病の予防
  • マイクロチップの装着
  • 獣医師の役職と略歴
  • 愛玩動物看護師が勤務していること

その代わり、診療内容を広告するときは、次の4つを全部添えることが条件になりました。

添えるものガイドラインが求めている中身
問合せ先広告の内容を問い合わせられる連絡先。手術のあとに容体が悪くなったときに対応できる連絡先(診療時間外の連絡先を含む)
通常必要とされる診療内容診療の内容、期間、回数
主なリスク、副作用利点だけを強調しない。リスクや副作用も分かりやすく
費用通常必要とされる標準的な費用。決まらない場合は、最低金額から最高金額までの幅

見落としやすいのが、問合せ先に診療時間外の連絡先まで含まれることです。夜間は対応していない病院なら、夜間に連絡する先(提携している夜間病院など)を書くことになります。

もう2つ、決まりがあります。狂犬病の予防注射を広告するときは、飼い主が犬の登録と注射済票の装着をする必要があることを書き添えます。マイクロチップの装着を広告するときは、装着後に犬や猫の登録が必要なことを書き添えます。

診療ページは、4つの枠を先に作る

ここからは、当社がホームページを作るときのやり方です。

診療内容ごとにページ(または節)を分け、本文を書く前に、4つの枠を作ってしまいます。枠が先にあれば、書き忘れが起きません。

避妊手術のページなら、こうなります。

枠書く内容の例
どんな診療か全身麻酔で卵巣(または卵巣と子宮)を取る手術。術前の血液検査、当日の入院、抜糸までの通院回数
主なリスク、副作用麻酔のリスク、術後の出血や傷の化膿、太りやすくなること
費用体重ごとの標準的な費用。「〇kg未満 〇円〜〇円」のように幅で。術前検査や入院が別料金ならその内訳
問合せ先電話番号と受付時間。術後に様子がおかしいときの連絡先(時間外を含む)

正直に書くと、費用の枠がいちばん手間です。体重や状態で変わるので、決めきれない病院が多い。ガイドラインはその場合に幅で書くことを認めています。「〇円〜」と下限だけを書くのは避けてください。最低限の費用だけを見せて呼び込む書き方は、ガイドラインがはっきり戒めています。

医療機器も、書き方に決まりがあります。「CT」「MRI」「超音波画像診断装置」のような一般的な名前は書けますが、製品名や型式番号は書けません。導入した機器の写真を載せるなら、型番が写り込まないようにします。

Googleマップは、広告として書く

ガイドラインに「Googleマップ」という言葉は出てきません。ただ、先に挙げたとおり「検索した結果、上位に表示されるもの」には認知性があるとされています。「動物病院」と検索して地図に出る病院の情報は、まさにそれです。

当社は、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出る病院の情報)は広告として扱って書きます。 人の医療のクリニックについても同じ立場を取っています(クリニックのGoogleマップと、書いてはいけない言葉。ただし人の医療は医療法で、動物病院とは別の法律です)。

場所ごとに、具体的にはこうします。

場所どう書くか
説明文診療科目、対象の動物、診療時間、愛玩動物看護師の在籍、駐車場。診療の効果や「安心」「痛くない」は書かない
サービス(診療メニュー)名前だけを並べると、4つが添えられない。名前は載せ、詳しくはホームページの該当ページへ誘導する
投稿「今月は〇〇が〇%オフ」「来院した方にプレゼント」は書かない(禁止例は次の節)
写真院内、設備、外観、スタッフ。手術の前と後を並べた写真は載せない
口コミへの返信お礼と事実の確認にとどめる。飼い主の感想を引用して、治療の効果を宣伝し直さない

口コミそのものについて、ガイドラインは、飼い主の体験が口コミで広まるのは個人が病院を勧めているだけで、原則として広告に当たらないとしています。問題になるのは、病院が自分で体験談を集めて載せたときです。口コミの画面を切り取ってホームページやInstagramに「患者様の声」として貼るのは、これに当たると考えてください。

口コミの集め方そのもの(特典と引き換えにしない、良い評価をくれそうな人だけに頼まない)は、Googleの口コミを増やす頼み方。違反にならない線はどこかに書きました。

書いてはいけない例

ガイドラインに載っている例を、そのまま挙げます。

種類ガイドラインの例
比較広告「どの動物病院よりも安全に手術を行います」/著名人のペットが当院で健診を受けている、という広告
誇大広告「効果抜群のワクチンを接種します」/「当院で行う避妊手術は比較的安全な手術です」(何と比べてか不明)
体験談病院が、飼い主の体験談を呼び込みのために紹介すること(内容が広告できる範囲でも不可)
術前術後の写真いわゆるビフォーアフター写真で、誤認させるおそれがあるもの
費用の強調「今なら〇円でキャンペーン実施中」「期間限定で〇〇療法を50%オフ」
関係ない物での誘引「健康診断をされた方全員に〇〇をプレゼント」

費用の強調とプレゼントは、獣医師の品位を損なう広告とされ、ガイドラインは獣医師法による免許の取消しや業務停止の対象になりうると書いています。

Googleマップの投稿機能は、飲食店や美容室なら割引やキャンペーンの告知に使うものです。そのままのつもりで動物病院が使うと、ここに引っかかります。

この記事で決められないこと

ここまでの内容は、ガイドラインの原文を読んで当社が整理したものです。個別の表現が広告に当たるか、違反になるかを決めるのは当社ではありません。

迷う表現があるときは、県の家畜保健衛生所や、獣医事を担当する畜産の窓口に、実際の画面やチラシを見せて確かめてください。ガイドラインも、都道府県の畜産の担当部署を相談の窓口にしています。

もう1つ。この記事は動物病院の広告の決まりだけを扱っています。動物用医薬品の名前や効能を書くことには、別の法律(医薬品医療機器等法)の決まりがあります。

まとめ

今日やることは1つです。Googleマップの投稿を開いて、割引やキャンペーン、プレゼントの文言が残っていないか見てください。 残っていたら削除します。

ホームページの書き直しは、その次で間に合います。診療ページごとに4つの枠を作るところから始めてください。

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出典